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運転席でハンドルを握る手

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原因研究 想定読者: 一般 読了 8

なぜトラック運転者は不足しているのか

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運転者が足りない、という話は10年以上続いている。ではなぜ集まらないのか。 待遇が悪いから、で片づけると対策を誤る。公的統計を並べると、労働時間、収入、年齢構成、 そして法令遵守の実態という4つの要因が、それぞれ別の理由で効いていることが見えてくる。

このページの結論

トラック運転者の不足は、募集が足りないという話ではない。全産業平均より年間420時間長く働き、年収はそれより低く、平均年齢は7歳高い。有効求人倍率は全職業平均の2倍を超える。労働時間・収入・年齢構成・法令遵守の実態が同時に効いており、待遇改善だけでも採用強化だけでも解けない構造になっている。

重要な事実

  • 令和7年度の有効求人倍率はトラック運転者2.49倍、全職業平均1.10倍だった
  • 営業用大型貨物自動車運転者の年間労働時間は2,496時間、全産業平均は2,076時間
  • 年間収入額は営業用大型で507万円、全産業平均の546万円を下回る
  • 平均年齢は営業用大型で51.5歳、全産業平均は44.4歳
  • 道路貨物運送業の就業者は29歳以下が10.0%、全産業の17.0%より少ない
  • 令和6年の監督指導では、対象事業場の81.6%で労働基準関係法令違反が確認された

読むときの注意

  • 統計上のトラック運転者は営業用貨物自動車の運転者を指し、自家用は含まれない
  • 有効求人倍率はハローワークを通じた求人・求職のみを対象としている
  • 年間収入額は企業規模や地域による差が大きく、平均値だけでは実態を表さない

この研究の根拠について

根拠の強さ

強い

情報の新しさ

最新

見解の一致度

意見が分かれる

出典

7 件(うち一次資料 7)

出典の構成

  • 官公庁 5
  • 公的統計 2

これらの指標は根拠がどれだけ揃っているかを示すもので、内容の真偽を判定するものではありません。 判定ルールは編集方針に公開しています。

このページで使う用語

有効求人倍率 ゆうこうきゅうじんばいりつ
ハローワークに登録された求人数を求職者数で割った値。1を超えると求人のほうが多い。ハローワークを通さない採用は含まれない。
営業用貨物自動車 えいぎょうようかもつじどうしゃ
他人の荷物を運んで運賃を受け取る自動車。自社の荷物を運ぶ自家用と区別される。統計上のトラック運転者は原則としてこちらを指す。
年間収入額 ねんかんしゅうにゅうがく
賃金構造基本統計調査で、毎月支給される現金給与額と年間の賞与等を合算して算出される額。

3分で分かる要約#

2.49倍

トラック運転者の有効求人倍率1

全職業平均は1.10倍

+420時間

全産業平均より長い年間労働時間1

営業用大型で2,496時間

−39万円

全産業平均より低い年間収入額1

営業用大型で507万円

+7.1歳

全産業平均より高い平均年齢1

営業用大型で51.5歳

概要 — トラック運転者が集まらない状態が続いている。令和7年度の有効求人倍率は2.49倍で、全職業平均の1.10倍を大きく上回る1。求人はあるのに人が来ない、という状態である。

原因 — 単一の理由ではない。労働時間が長い、収入が全産業平均を下回る、年齢構成が上に偏っている、そして法令遵守の実態が悪い——この4つが同時に効いている。

現状 — 営業用大型貨物自動車運転者の年間労働時間は2,496時間で、全産業平均の2,076時間より420時間長い1。年間収入額は507万円で、全産業平均の546万円を下回る1。平均年齢は51.5歳、全産業平均は44.4歳である1

主な論点 — 待遇を改善すれば解決するのか。原資となる運賃を上げる仕組みは2024年以降に整えられたが、それが賃金に届いたかを示す検証はまだ確認できない。

結論 — 「長く働いて、平均より稼げず、高齢化している」という三重の状態が同時に成立している。どれか一つを直しても他が残る。

用語の定義#

統計上の「トラック運転者」は、原則として営業用貨物自動車の運転者を指す。自社の荷物を自社の車で運ぶ自家用の運転者は含まれない。この記事の数値も同じ範囲である。

また、運転者の統計は「営業用大型貨物自動車運転者」と「営業用貨物自動車運転者(大型車を除く)」に分かれていることが多い。長距離を担うのは主に前者で、労働時間も収入も後者より高い。両者を混ぜた平均だけを見ると、実態がぼやける。

背景#

運転者不足は2024年に始まった話ではない。有効求人倍率の推移を見ると、令和2年度の時点ですでに1.94倍あり、全職業平均の1.01倍とは倍近い開きがあった1。その後も年度を追って上がり続けている。

つまり、労働時間規制が不足を生んだのではない。もともと不足していたところに、一人あたりの労働時間に上限が入ったというのが順序である。

  1. 令和2年度有効求人倍率 トラック運転者1.94倍/全職業平均1.01倍
  2. 令和4年度2.14倍/1.19倍。差が広がり始める
  3. 令和6年度2.37倍/1.14倍
  4. 令和7年度2.49倍/1.10倍。全職業平均は下がっているのに、運転者だけ上がり続けている
有効求人倍率の推移(トラック運転者)
令和2年度1.94倍
令和3年度1.96倍
令和4年度2.14倍
令和5年度2.18倍
令和6年度2.37倍
令和7年度2.49倍
全職業平均(令和7年度)1.1倍

全職業平均が1.10倍まで下がっているのに、トラック運転者だけが上がり続けている点が重要である。労働市場全体が緩んでも、この職種には人が回ってこない。

原因の構造#

1. 労働時間が長い#

営業用大型貨物自動車運転者の年間労働時間は2,496時間、大型車を除く運転者は2,388時間、全産業平均は2,076時間である1。大型で420時間、単純に月あたり35時間の差になる。

この差は長期的に縮んではいる。厚生労働省の資料によれば、トラック運転者の年間総労働時間は令和2年の2,532時間から令和6年の2,484時間まで下がっており、同じ期間に産業計も2,100時間から2,052時間へ下がっている2。ただし差は432時間で、ほぼ変わっていない2

2. 収入が全産業平均を下回る#

年間収入額は、営業用大型貨物自動車運転者で507万円、大型車を除く運転者で449万円、全産業平均は546万円である1

長く働いて、それでも平均を下回る。時間あたりに直すと差はさらに開く。

区分 年間労働時間 年間収入額
営業用大型貨物自動車運転者 2,496時間 507万円
営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) 2,388時間 449万円
全産業平均 2,076時間 546万円

出典はいずれも賃金構造基本統計調査である13

3. 年齢構成が上に偏っている#

平均年齢は営業用大型貨物自動車運転者で51.5歳、大型車を除く運転者で50.3歳、全産業平均は44.4歳である1

年齢構成で見ると偏りはより明確になる。道路貨物運送業の就業者のうち45〜59歳が45.0%を占め、全産業の34.1%を上回る。一方で29歳以下は10.0%にとどまり、全産業の17.0%を下回る14

新しく入る人が少なく、いま支えている層が同時に高齢化していく。10年単位で見ると、この構成そのものが供給の制約になる。

女性の比率も低い。道路貨物運送業の就業者に占める女性の割合は20.5%で、全産業の45.8%を大きく下回る。建設業の18.4%と近い水準である14。担い手を広げる余地がある、とも読めるが、その余地が長年埋まっていないという事実でもある。

4. 法令遵守の実態が悪い#

令和6年に監督指導を行った4,328事業場のうち、81.6%にあたる3,532事業場で労働基準関係法令違反が認められた。全業種の違反率は70.1%で、これを上回る2。主な違反事項は労働時間が44.0%、割増賃金の支払が21.3%である2

健康面の指標も厳しい。自動車運転従事者の脳・心臓疾患による労災支給決定件数は令和6年度に72件で、全職種241件の約3割を占める2

トラックの運転席で休息をとる運転者
道路貨物運送業は脳・心臓疾患による労災の支給決定件数が最も多い業種とされる。

求人票の条件が守られるとは限らない業種である、という認識が広がれば、それ自体が応募を減らす。労働条件の水準だけでなく、その条件が守られるかどうかも、人が集まるかどうかに効く。

データで見る#

規制の側からも見ておく。2024年4月から適用された改善基準告示では、1年の拘束時間の上限が3,516時間から3,300時間へ、1か月は293時間から284時間へ引き下げられた2。1日の拘束時間の上限は16時間から15時間になり、休息期間は「継続8時間以上」から「継続11時間を基本とし、9時間を下回らない」へ変わっている25

制度の側は、一人あたりの労働時間をさらに縮める方向に動いている。人数が増えなければ、輸送できる総量は減る。国が2030年度の需給ギャップを試算する際も、運転者数と労働時間の変化を供給側の前提に置いている7。関連する数値は日本の物流を数字で見るにまとめている。

労働時間を縮めながら収入を下げないためには、時間あたりの単価を上げるしかない。2024年3月に標準的な運賃が8%引き上げられ、荷役の対価等が新たに加算されたのは、この原資を確保するための措置である6

主な論点#

待遇を上げれば人は戻るのか — 賃金水準を全産業平均並みに引き上げれば応募が増える、という見方がある。一方で、労働時間の長さや拘束のされ方そのものが敬遠されているのなら、賃金だけでは動かないという見方もある。この点を検証した公的資料は確認できなかった。

運賃の引き上げは賃金に届くのか — 標準的な運賃は8%引き上げられたが6、それが実際の契約運賃に反映され、さらに運転者の賃金へ回ったかは別の話である。下請けの層が深いほど、途中で目減りする余地がある。

若年層が入らない理由は何か — 29歳以下の比率は10.0%である1。免許制度、初期の収入、労働時間、業界のイメージなど複数の説明があるが、どれがどれだけ効いているかを示すデータは見当たらなかった。

「不足の主因は待遇である」という見方について

賛成

年間420時間長く働いて収入は平均以下という状態が続いている。時間あたりで見れば差はさらに大きく、他業種と比べて選ばれにくい条件が数字で確認できる。

反対

待遇の指標は近年改善している一方で、有効求人倍率は下がるどころか上がり続けている。待遇以外の要因、たとえば拘束のされ方や年齢構成の慣性が効いている可能性がある。

不確実性#

離職理由のデータがない — なぜ辞めるのか、なぜ入らないのかを運転者本人に継続的に尋ねた公的調査は確認できなかった。原因の重みづけは、いずれも状況証拠にもとづく推論である。

平均値の限界 — 年間収入額も労働時間も平均値である。賃金構造基本統計調査は企業規模別の集計も持つが、この記事では全体平均のみを扱った。小規模事業者の実態は平均から外れている可能性がある3

有効求人倍率の対象範囲 — ハローワークを通じた求人・求職のみが対象である。求人サイトや紹介による採用は含まれない。倍率の水準そのものを他職種と比べることには意味があるが、絶対的な不足量を示す数値ではない。

女性比率の解釈 — 20.5%という数値は道路貨物運送業の就業者全体であり、運転者に限った比率ではない4。事務職なども含むため、運転者に限れば低くなると考えられるが、その内訳は確認できなかった。

研究の穴

分かっていることと、分かっていないことを分けて示します。情報が足りない部分を隠しません。

このテーマで分かっていること 確度が高い内容
  • 労働時間・収入・平均年齢・有効求人倍率の水準は、公的統計で継続的に把握できる
  • 監督指導を受けた事業場の8割以上で労働基準関係法令違反が確認されている
  • 若年層の比率が全産業より低く、年齢構成が上に偏っていることは統計で確認できる
このテーマで分かっていないこと 未解決・未確認・研究不足
  • 離職の理由を運転者本人に継続的に尋ねた公的な調査結果は確認できなかった
  • 2024年以降の運賃引き上げが、実際に運転者の賃金へどれだけ転嫁されたかを示す事後検証は見当たらない
  • 企業規模別・地域別の運転者不足の偏りを横断的に示した資料を確認できていない
次に調べるべきこと 追加調査の候補
  • 賃金構造基本統計調査の年次データで、2024年以降の収入額の推移を確認する
  • 労働力調査で道路貨物運送業の就業者数そのものの増減を追う
  • 監督指導の違反率が規制適用後に低下しているかを、翌年以降の資料で確認する

よくある疑問

トラック運転者はどれくらい不足しているのですか
不足人数を示す公的な数値はありません。代わりに有効求人倍率が使われ、令和7年度はトラック運転者が2.49倍、全職業平均が1.10倍でした。
給料が安いから人が集まらないのですか
それも一因です。営業用大型貨物自動車運転者の年間収入額は507万円で、全産業平均の546万円を下回ります。ただし労働時間は年間420時間長く、時間あたりで見た差はさらに大きくなります。
若い人は入ってこないのですか
少ない状態が続いています。道路貨物運送業の就業者に占める29歳以下の割合は10.0%で、全産業の17.0%を下回ります。
女性の運転者は増えていますか
道路貨物運送業の就業者に占める女性の割合は20.5%で、全産業の45.8%を大きく下回ります。ただしこの数値は運転者以外の職種も含みます。

このテーマが引き起こすこと 基礎研究

物流の2024年問題とは

運転者不足を前提に、労働時間規制の影響が問題になった

このテーマが引き起こすこと 基礎研究

標準的な運賃とは

賃金を上げる原資をどう確保するかという話につながる

このテーマの原因 基礎研究

物流の多重下請構造とは

実際に運ぶ事業者に対価が届かない構造が、賃金の低さの一因とされる

このテーマに含まれる データ研究

日本の物流を数字で見る

ここで扱った統計の元データ

このテーマが引き起こすこと 未来研究

2030年の物流はどうなるか

運転者数の見通しは2030年度の需給ギャップの前提になっている

このページを参照している研究 ハブ

物流問題研究

このページを参照している研究 基礎研究

宅配便の再配達問題とは

このページを参照している研究 基礎研究

荷主への規制とは

このページを参照している研究 基礎研究

ラストマイル配送とは

このページを参照している研究 原因研究

なぜ運賃は上がりにくいのか

このページを参照している研究 歴史研究

日本の物流はどう変わってきたか

このページを参照している研究 課題研究

地方の物流はどこまで維持できるか

このページを参照している研究 賛否研究

自動運転トラックは物流危機を解決するか

このページを参照している研究 比較研究

日本と欧米で規制はどう違うか

出典

本文中の番号は、この一覧の番号に対応します。参照日時点の内容にもとづきます。

  1. 統計からみるトラック運転者の仕事(自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト)

    官公庁 厚生労働省 発行日不明 2026年8月8日参照

    有効求人倍率・平均年齢・年齢構成・女性比率・年間労働時間・年間収入額の数値

  2. 第18回トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会 資料2(厚生労働省提出資料)

    官公庁 厚生労働省労働基準局 2025年9月18日発行 2026年8月8日参照

    労働時間の推移、労災支給決定件数、監督指導の結果、改善基準告示の新旧比較

  3. 賃金構造基本統計調査

    公的統計 厚生労働省 発行日不明 2026年8月8日参照

    労働時間・収入・平均年齢の出典となる公的統計

  4. 労働力調査

    公的統計 総務省統計局 発行日不明 2026年8月8日参照

    年齢構成と女性比率の出典となる公的統計

  5. トラック運転者の改善基準告示(自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト)

    官公庁 厚生労働省 発行日不明 2026年8月8日参照

    2024年4月から適用された拘束時間・休息期間の基準

  6. 新たなトラックの標準的運賃を告示しました

    官公庁 国土交通省物流・自動車局貨物流通事業課 2024年3月22日発行 2026年8月8日参照

    賃金の原資を運賃で確保するという政策の方向

  7. 2030年度に想定される輸送力不足への対応方針(第9回 2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会 資料1-1)

    官公庁 国土交通省 2026年2月26日発行 2026年8月8日参照

    供給側の前提として置かれている運転者数と労働時間の見通し

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タイトル
なぜトラック運転者は不足しているのか
サイト名
研究図鑑
公開日
2026年8月8日
最終更新日
2026年8月8日
URL
https://research.lb-product.com/research/logistics/driver-shortage

引用形式の例

研究図鑑 編集部「なぜトラック運転者は不足しているのか」研究図鑑、2026年8月8日公開/2026年8月8日更新、https://research.lb-product.com/research/logistics/driver-shortage

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