日本の物流を数字で見る
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物流の議論では数字がよく使われる。しかし出典も対象年も添えられないまま引用されることが多い。 ここでは輸送量、担い手、労働条件、宅配便の主要な数値を、どの統計のいつの数字かを明示して並べる。 あわせて、比較してはいけない数値の組み合わせも示す。
このページの結論
物流を語るときによく使われる数値を、出典と対象年つきで整理した。貨物輸送量は2024年度で25.1億トン、2019年度の28.4億トンから減っている。トラック運転者の年間労働時間は2,496時間で全産業平均より420時間長い。宅配便は年間50億個を超えた。数値は統計ごとに定義も対象年も異なるため、単独で引用すると意味が変わる。
重要な事実
- 2024年度の貨物輸送量は25.1億トン、2019年度は28.4億トンだった
- 営業用大型貨物自動車運転者の年間労働時間は2,496時間、全産業平均は2,076時間
- 年間収入額は営業用大型で507万円、全産業平均は546万円
- 令和7年度の有効求人倍率はトラック運転者2.49倍、全職業平均1.10倍
- 令和6年度の宅配便取扱個数は50億3147万個で、前年度比約0.5%増だった
- 令和7年10月の宅配便再配達率は約8.3%だった
読むときの注意
- 統計ごとに対象年も定義も異なるため、単純に並べて比較できない数値がある
- 輸送量の推計と実績値は別のものであり、混ぜて引用してはいけない
- トラック運転者の統計は営業用貨物自動車の運転者を指し、自家用は含まれない
この研究の根拠について
根拠の強さ
強い
情報の新しさ
最新
見解の一致度
概ね一致
出典
10 件(うち一次資料 10)
目次 14 章
このページで使う用語
- 輸送トン数 ゆそうトンすう
- 運ばれた貨物の重量。同じ荷物を2回積み替えれば2回分として数える場合があるため、実際の貨物量とは一致しないことがある。
- 輸送トンキロ ゆそうトンキロ
- 貨物の重量に輸送距離を掛けた値。長距離輸送の比重を反映できるため、輸送機関の分担率を見るときに使われる。
- 再配達率 さいはいたつりつ
- 宅配便のうち再配達となった割合。国土交通省が年2回のサンプル調査として公表している。
用語の定義#
物流の統計を読むときに最初につまずくのが、トン数とトンキロの違いである。
輸送トン数は運んだ重量、輸送トンキロは重量に距離を掛けた値である。近距離を大量に運ぶ輸送と、長距離を少量運ぶ輸送では、どちらを使うかで見え方が変わる。輸送機関ごとの分担率を語るときは、通常トンキロが使われる。
もうひとつが営業用と自家用の区別である。他人の荷物を運んで運賃を受け取るのが営業用、自社の荷物を自社の車で運ぶのが自家用である。この記事で扱う運転者の統計は、原則として営業用貨物自動車の運転者を対象としている34。
主要な数値#
輸送量#
上2つは実績、いちばん下は推計である。**混ぜて時系列として並べてはいけない。**グラフでは推計だけ色を変えている。推計の前提は2030年の物流はどうなるかで分解している。
実績値は自動車輸送統計調査で継続的に公表されている2。
担い手#
| 項目 | トラック運転者 | 全産業・全職業 | 対象年 |
|---|---|---|---|
| 年間労働時間(営業用大型) | 2,496時間 | 2,076時間 | 令和7年34 |
| 年間労働時間(大型車を除く) | 2,388時間 | 同上 | 令和7年34 |
| 年間収入額(営業用大型) | 507万円 | 546万円 | 令和7年34 |
| 年間収入額(大型車を除く) | 449万円 | 同上 | 令和7年34 |
| 平均年齢(営業用大型) | 51.5歳 | 44.4歳 | 令和7年34 |
| 有効求人倍率 | 2.49倍 | 1.10倍 | 令和7年度3 |
| 29歳以下の割合 | 10.0% | 17.0% | 令和7年35 |
| 45〜59歳の割合 | 45.0% | 34.1% | 令和7年35 |
| 就業者に占める女性の割合 | 20.5% | 45.8% | 令和7年35 |
年齢構成と女性比率は道路貨物運送業の就業者全体であり、運転者に限った数値ではない5。これらの数値が何を意味するかはなぜトラック運転者は不足しているのかで扱う。
宅配便#
| 項目 | 数値 | 対象年 |
|---|---|---|
| 宅配便取扱個数 | 50億3147万個(前年度比 約0.5%増) | 令和6年度6 |
| うちトラック運送 | 49億2614万個 | 令和6年度6 |
| うち航空等利用運送 | 1億533万個 | 令和6年度6 |
| メール便取扱冊数 | 33億4477万冊(前年度比 約7.3%減) | 令和6年度6 |
| 再配達率 | 約8.3% | 令和7年10月7 |
宅配便は上位3便(宅急便、飛脚宅配便、ゆうパック)で約95.2%を占める6。取扱個数の統計は、実質的に大手3社の動向を映していると読める。再配達率の詳細は宅配便の再配達問題とはで扱う。
時系列#
労働時間はどう動いたか#
年間の総労働時間の推移は次のとおりである8。
| 年 | トラック運転者 | 産業計 | 差 |
|---|---|---|---|
| 令和2年 | 2,532時間 | 2,100時間 | 432時間 |
| 令和6年 | 2,484時間 | 2,052時間 | 432時間 |
両方が同じだけ下がったため、差は5年間まったく変わっていない。労働時間規制が適用された令和6年の時点でも、差は432時間のままである8。
有効求人倍率はどう動いたか#
トラック運転者と全職業平均の推移は次のとおりである3。
| 年度 | トラック運転者 | 全職業平均 |
|---|---|---|
| 令和2年度 | 1.94倍 | 1.01倍 |
| 令和3年度 | 1.96倍 | 1.05倍 |
| 令和4年度 | 2.14倍 | 1.19倍 |
| 令和5年度 | 2.18倍 | 1.17倍 |
| 令和6年度 | 2.37倍 | 1.14倍 |
| 令和7年度 | 2.49倍 | 1.10倍 |
令和4年度以降、全職業平均が下がるなかでトラック運転者だけが上がり続けている。労働市場全体が緩んでも、この職種には人が回っていない。
再配達率の目標と実績#
政策パッケージは、再配達率を12%から6%へ半減させることを施策効果の前提に置いていた9。
実績は、令和6年10月が約10.2%、令和7年10月が約8.3%である7。下がってはいるが、6%には届いていない。
- 令和2年度有効求人倍率 1.94倍。輸送需要はまだ2019年水準に近い
- 令和5年6月政策パッケージ。再配達率12%→6%を目標に設定
- 令和6年4月労働時間規制が適用
- 令和6年度貨物輸送量25.1億トン。宅配便は50億個を突破
- 令和7年10月再配達率 約8.3%
- 令和7年度有効求人倍率 2.49倍。過去6年で最高
内訳#
監督指導と労災#
労働条件の実態を示す数値として、監督指導の結果がある8。
| 項目 | 数値 | 対象 |
|---|---|---|
| 監督指導を行った事業場 | 4,328事業場(うちトラック3,424) | 令和6年 |
| 労働基準関係法令違反が認められた割合 | 81.6% | 令和6年 |
| 全業種の違反率 | 70.1% | 令和6年 |
| 主な違反事項:労働時間 | 44.0% | 令和6年 |
| 主な違反事項:割増賃金の支払 | 21.3% | 令和6年 |
| 脳・心臓疾患の労災支給決定件数(自動車運転従事者) | 72件 | 令和6年度 |
| 同、全職種 | 241件 | 令和6年度 |
自動車運転従事者は全職種の約3割を占める8。
定義の違いと注意点#
数値を引用するときに、実際に間違えやすい組み合わせを挙げる。
推計と実績を混ぜない — 2030年度の24.3億トンは推計、2024年度の25.1億トンは実績である1。並べて折れ線にすると、あたかも確定した将来のように見えてしまう。
対象年を確認する — 労働時間には令和7年の2,496時間(賃金構造基本統計調査の営業用大型)3と、令和6年の2,484時間(同調査のトラック運転者)8がある。集計区分も年も違うため、どちらを使うかで数字が変わる。「トラック運転者の年間労働時間は約2,500時間」という粒度で語るなら問題ないが、40時間の差を論拠にしてはいけない。
業種と職種を混同しない — 女性比率20.5%や年齢構成は「道路貨物運送業」という業種の就業者に対する数値であり、運転者という職種に限った数値ではない5。事務職や整備職も含む。
有効求人倍率は不足量ではない — ハローワークを通じた求人と求職の比率であり、求人サイトや紹介による採用は含まれない。倍率が2.49倍でも、不足人数が何万人かは分からない3。
宅配便の個数は取扱ベース — 同じ荷物が複数回配達されても、取扱個数は1個として数えられる。再配達の負担は個数には表れない67。
不確実性#
自家用が見えない — この記事の数値は営業用が中心である。自家用トラックを含めた全体像を示す統計は確認できなかった。
分布が分からない — 労働時間も収入も平均値である。事業者規模別・地域別の分布は、ここで扱った資料からは読み取れない4。
再配達率はサンプル調査 — 年2回、特定の月を対象としたサンプル調査である7。季節変動の影響を受けるため、通年の実態とは一致しない可能性がある。
推計の前提が公開されていない部分がある — 2030年度の推計について、需要量と供給量の前提は示されているが、その前提が選ばれた根拠までは示されていない1。
専門家向け補足#
輸送量の統計を扱う際は、2020年4月に区切りがある点に留意が必要である。国土交通省の自動車輸送統計のページは「2020年4月以降の自動車輸送統計調査に関する情報を掲載しています。2020年3月以前の統計調査は以下のリンクよりご参照ください」として、2020年3月以前を別のページに分けている。あわせて「令和2年4月分調査以降の変更点について」という参考資料が用意されている2。長期の時系列を作る場合は、この変更点を確認したうえで扱う必要がある。
また、この記事で扱った「貨物輸送量」はトン数ベースである。輸送機関別の分担率を論じる場合はトンキロベースを使うのが通例で、国の資料はトラック運送業が「トンキロベースで全体の輸送量の約半分を担っている」としている10。トン数ベースとトンキロベースでは分担率が大きく異なるため、どちらの指標で語っているかを明示する必要がある。
研究の穴
分かっていることと、分かっていないことを分けて示します。情報が足りない部分を隠しません。
- 輸送量、労働時間、収入、宅配便の主要な数値は公的統計で継続的に把握できる
- 再配達率は年2回のサンプル調査として公表されている
- 自家用トラックによる輸送量を含めた全体像を示す統計は確認できなかった
- 事業者規模別の労働時間・収入の分布は、この記事で扱った資料からは分からない
- 品目別・地域別の輸送量の変化を横断的に整理した資料を確認できていない
- 自動車輸送統計の年報で2025年度の貨物輸送量を確認し、25.1億トンからの推移を追う
- 賃金構造基本統計調査の企業規模別集計で、中小事業者の水準を確認する
- 宅配便取扱実績の次年度公表で、50億個が頭打ちかどうかを見る
よくある疑問
日本のトラックはどれくらいの荷物を運んでいますか
宅配便は年間どれくらい取り扱われていますか
再配達率はどれくらいですか
数値を引用するときの注意はありますか
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出典
本文中の番号は、この一覧の番号に対応します。参照日時点の内容にもとづきます。
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2030年度に想定される輸送力不足への対応方針(第9回 2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会 資料1-1)
2019年度・2024年度・2030年度想定の貨物輸送量
-
貨物輸送量の一次統計
-
統計からみるトラック運転者の仕事(自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト)
労働時間・収入・平均年齢・年齢構成・女性比率・有効求人倍率
-
労働時間・収入・平均年齢の一次統計
-
年齢構成・女性比率の一次統計
-
宅配便取扱個数とメール便取扱冊数
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再配達率の最新値と前年同月比
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第18回トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会 資料2(厚生労働省提出資料)
労働時間の年次推移、労災支給決定件数、監督指導の結果
-
「物流革新に向けた政策パッケージ」の取組状況について(資料1)
再配達率の目標値と施策効果の想定
-
トンキロベースでの輸送分担に関する記述
この研究を引用する
- タイトル
- 日本の物流を数字で見る
- サイト名
- 研究図鑑
- 公開日
- 2026年8月8日
- 最終更新日
- 2026年8月8日
- URL
- https://research.lb-product.com/research/logistics/statistics
引用形式の例
研究図鑑 編集部「日本の物流を数字で見る」研究図鑑、2026年8月8日公開/2026年8月8日更新、https://research.lb-product.com/research/logistics/statistics
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