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住宅街の路上に停まる白い配送用トラックの後ろ姿

写真: Pexels

基礎研究 想定読者: 一般 読了 9

ラストマイル配送とは

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荷物が受取人の手元に届くまでの最後の区間を、ラストマイルと呼ぶ。 距離は短いが、届け先は1軒ずつ違い、まとめて運ぶことができない。物流のなかで最も人手がかかる区間である。 国の検討会が2025年11月にまとめた資料から、この区間で何が起きているのかを整理する。

このページの結論

ラストマイル配送とは、配送拠点から受取人の手元までの最終区間を指す。宅配便は年間約50億個、国民1人あたり約40個に達し、大手宅配事業者では配達員1人あたりの月間配達個数がこの5年で約29%増える一方、人数は約7%減った。国は受取方法の多様化、担い手の安全確保、地方の輸送手段の確保という3方向で対策を進めている。

重要な事実

  • 令和6年度の宅配便取扱個数は50億3147万個で、令和元年度の約1.2倍になった
  • 大手宅配事業者では配達員1人あたりの月間配達個数が約29%増え、人数は約7%減った
  • 直近30年で1件あたりの平均貨物量は約3分の1になり、物流件数は概ね2倍になった
  • 標準宅配便運送約款は対面での引渡しのみを定めており、置き配には個別の認可が必要
  • 事業用軽自動車の死亡・重傷事故は保有1万台あたりで約5割増えた
  • 2030年に北海道・東北・四国・九州で約40%の輸送力不足という民間試算がある

読むときの注意

  • 再配達率は調査対象の事業者数が3社から6社へ変わっており、資料間で数値が異なる
  • 輸送力不足の地方別の数値は民間試算であり、国の公式な推計ではない
  • 検討会の取りまとめは方向性を示したものであり、制度改正が確定したものではない

この研究の根拠について

根拠の強さ

中程度

情報の新しさ

最新

見解の一致度

概ね一致

出典

6 件(うち一次資料 6)

出典の構成

  • 官公庁 6

これらの指標は根拠がどれだけ揃っているかを示すもので、内容の真偽を判定するものではありません。 判定ルールは編集方針に公開しています。

このページで使う用語

ラストマイル らすとまいる
配送拠点から受取人の手元までの最終区間。距離ではなく、配送の最終工程を指す言葉として使われる。
幹線輸送 かんせんゆそう
拠点と拠点のあいだをまとめて運ぶ区間。ラストマイルの手前にあたり、大型車・鉄道・船舶が使われる。
貨物軽自動車運送事業 かもつけいじどうしゃうんそうじぎょう
軽自動車を使って有償で貨物を運ぶ事業。届出制で、個人事業主が多い。宅配の最終区間を担うことが多い。
標準宅配便運送約款 ひょうじゅんたくはいびんうんそうやっかん
宅配便の統一的なモデルとして国土交通大臣が定めて公示した約款。平成2年運輸省告示第576号。
貨客混載 かきゃくこんさい
バスやタクシーなど旅客用の車両で貨物もあわせて運ぶこと。過疎地域では要件が緩和されている。

3分で分かる要約#

50億3147万個

令和6年度の宅配便取扱個数3

令和元年度の約1.2倍1

約40個

国民1人あたりの年間利用1

大手宅配事業者の取扱分のみ

+29%

配達員1人あたりの月間配達個数1

令和元年度→令和5年度

−7%

同じ期間の配達員の人数1

荷物は増え、人は減った

ラストマイルとは、配送拠点から受取人の手元までの最終区間である。距離は短い。しかし届け先は1軒ずつ違い、在宅かどうかも分からない。まとめて運ぶことができないため、物流のなかで最も人手がかかる。

国土交通省は2025年6月に「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」を設置し、同年11月7日に取りまとめを公表した2。この記事はその資料を軸に整理する。

用語の定義#

物流は、荷物が動く区間によって呼び分けられる。

区間 内容 特徴
幹線輸送 拠点と拠点のあいだ まとめて運べる。大型車・鉄道・船舶が使える
ラストマイル 配送拠点から受取人まで 1軒ずつ違う。まとめられない

「ラストマイル」は距離の単位ではない。 最終工程そのものを指す言葉である。都市部では数百メートル、地方では数十キロになることもある。

この区間を実際に走っているのは、宅配事業者の車両だけではない。軽自動車を使って有償で貨物を運ぶ貨物軽自動車運送事業が大きな役割を担っており、個人事業主が多数を占める1

背景 — 荷物は「小さく・多く」なった#

ラストマイルの負荷は、荷物が増えたからだけではない。荷物の形が変わった。

約1/3

1件あたりの平均貨物量1

直近30年の変化

約2倍

物流件数1

同じ期間

−40%

貨物の総量1

同じ期間

総量は4割減っているのに、件数は2倍。1件が小さくなり、回数が増えた。 これが「小口・多頻度化」と呼ばれる現象である1

背景にはEC市場の成長がある。平成27年から令和6年にかけて、EC市場の規模は約1.9倍になった1。インターネットを利用した1世帯あたりの支出では日用雑貨が最も高く、購入頻度も高いと想定されるため、この傾向は続くと見られている1

住宅街の路上に停まる2社の配送用バン
同じ街区を、複数の事業者の車両がそれぞれ走る。配送の共同化が論点になるのはこのためである。(写真は日本国外)

その結果が冒頭の数字である。荷物は増え、運ぶ人は減った。

大手宅配事業者の変化(令和元年度→令和5年度)
1人あたりの月間配達個数の増加29%
配達員の人数の減少7%

グラフはいずれも変化の大きさを示している。上が増加、下が減少である。1人が同じ時間で29%多く配るには、1件あたりにかけられる時間を減らすしかない。運転者不足が慢性化しているなかで、この区間だけが逆方向に動いている。

いま何が論点になっているか#

検討会は、取り組むべき方向を3つに整理した1

方向 何をしようとしているか
受取方法の変革 対面以外の受け取りを、例外ではなく選択肢のひとつにする
地域の物流の維持 自治体や他業種と組んで、採算の合わない地域の配送を支える
新たな輸送手段 ドローンや自動配送ロボットを、補完ではなく事業として成り立たせる

受取方法 — 制度の側が追いついていない#

再配達率は下がってきた。コロナ禍より前は約15%程度で推移していたが、令和7年4月時点では大手6社ベースで8.4%、大手宅配事業者3社ベースで9.5%である1。この低下により、約6,000万時間の労働コストの削減、運転者約3万人に相当する輸送力の改善、年間約7.1万トンのCO2削減が見込まれると試算されている1。数字の詳細は宅配便の再配達問題とはで扱う。

国が行ったポイント還元の実証事業では、令和6年10月時点の再配達率(10.2%)と比べて次の効果が得られた1

ポイント還元実証事業による再配達率の減少幅
置き配3.1ポイント
1回受け取り1.2ポイント

置き配の効果が大きい。 ところが制度の側が追いついていない。

検討会は、この約款を改正して対面以外の受取方法を選択肢のひとつとして位置づける方向で検討を進めるとした。あわせて、盗難・破損が起きたときの責任分担を明確にするガイドラインを定める方向も示している1

普及の余地もまだ大きい。大手宅配事業者が無料で提供している会員サービスでは、いつでも対面以外の受取方法を指定できる仕組みが整っているが、実際に利用している会員は全体の4分の1程度にとどまる1

住宅側の事情もある。2000年以降に建設された分譲マンションには新築時から宅配ボックスが概ね設置されているが、それ以前のマンションでは設置スペースと費用が課題になっている1

担い手 — 軽貨物の安全#

ラストマイルの最終段階を担うことが多い軽貨物では、事故が増えている。

約5割増

事業用軽自動車の死亡・重傷事故5

保有1万台あたり・平成28年→令和4年

これを受けて、国は貨物軽自動車運送事業の安全対策を強化する制度改正を行った(令和6年10月1日公表)5

内容 義務
貨物軽自動車安全管理者 営業所ごとに選任し、講習を受講する。国土交通大臣へ届け出る5
業務記録 毎日の業務開始・終了地点、従事した距離等を記録し1年間保存5
事故記録 事故の概要・原因・再発防止対策を記録し3年間保存5

個人事業主が多い領域に、記録と管理の義務が入ったことになる6

地方 — 採算が合わない区間をどう支えるか#

民間試算のなかには、2030年に北海道・東北・四国・九州の各地方で約40%の輸送力不足が生じると推計しているものもある1。小売業向けの配送では平均流動ロットが年々減少しており、過疎地域では輸送効率の低下がより深刻とされる1

検討会が示した方向は、規制そのものを緩めるのではなく、使いにくい要件を実態に合わせるものが中心である1

検討されている見直し

  1. 1貨客混載過疎地域以外で実施する際の協議に「荷主を代表する者」を必ずしも含めなくてよい方向へ
  2. 2軽トラックの車両共同使用冷蔵冷凍品など特殊な運送需要に対応する期間も認める方向へ
  3. 3自家用有償運送日数・台数の扱いを、時間単位の需要波動も考慮して弾力化する方向へ
  4. 4伝票の標準化事業者ごとに異なる配送伝票・伝票番号の体系を揃える官民の枠組みを新設する方向へ

伝票の標準化は地味に見えるが、影響は大きい。事業者ごとに伝票が違うことが、地域での配送の共同化・分業を妨げていると検討会は指摘している1

ドローンについては、令和7年3月に「無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン 第一版」が公表された。今後は1人の操縦者が扱える機体数を5機以上へ増やすことや、レベル4飛行への拡大が検討されている1

不確実性#

効果の定量が示されていない — 約款の改正、伝票の標準化、貨客混載の要件緩和のいずれについても、実施した場合に配送効率がどれだけ改善するかを示した試算は確認できなかった。方向性の提示にとどまっている。

再配達率の数値は資料間で異なる — 令和7年4月時点で、大手6社ベースでは8.4%、大手宅配事業者3社ベースでは9.5%である14同じ月の数値でも調査対象が違えば1ポイント以上ずれる。 推移を論じるときは、どちらのベースかを必ず確認する必要がある。

地方別の40%は民間試算である — 北海道・東北・四国・九州で約40%という数値は、検討会の資料が民間試算として紹介しているものであり1、国の公式な推計ではない。国自身の見通しは2030年の物流はどうなるかで扱っている。

軽貨物の事故増加の要因が分からない — 保有1万台あたりの死亡・重傷事故が約5割増えたことは示されているが5、それが走行距離の増加によるものか、稼働時間の長さによるものか、経験年数の短い事業者の増加によるものかを分解した分析は確認できなかった。したがって、安全管理者の選任義務がどれだけ効くかも見通せない。

検討会の取りまとめは決定ではない — 本文で「検討を進める」と書いた項目は、いずれも方向性を示した段階である1。制度改正として確定したものではない。

やさしい説明#

小学生向け — 荷物は工場やお店から大きなトラックでまとめて運ばれる。でも最後は、1軒ずつ家に届けなければならない。この最後の部分をラストマイルという。1年で50億個の荷物があり、日本の人みんなで割ると1人40個くらい。運ぶ人は減っているのに、荷物は増えている。

中高生向け — インターネットで買い物をする人が増えて、荷物は「小さく・多く」なった。この30年で1件あたりの量は3分の1になり、件数は2倍になっている。大手宅配事業者では、配達員1人が1か月に配る個数がこの5年で約29%増え、人数は約7%減った。国は置き配などの受取方法を選びやすくすることと、地方の配送を支える仕組みづくりを進めている。

一般向け — ラストマイルの問題は「荷物が多い」ことではなく、1件あたりが小さくなり回数が増えたことにある。対策の中心は受取方法の設計だが、置き配は普及しているのに標準宅配便運送約款では対面引渡しのみが定められており、実施には個別の認可が必要という状態が続いている。国の検討会はこの約款の改正、配送伝票の標準化、貨客混載の要件緩和といった論点を整理したが、いずれも効果の定量的な見通しは示されていない。制度の側が実態に追いついていないというのが現在地である。

研究の穴

分かっていることと、分かっていないことを分けて示します。情報が足りない部分を隠しません。

このテーマで分かっていること 確度が高い内容
  • 宅配便の取扱個数、再配達率、配達員1人あたりの負荷の変化が公表資料で確認できる
  • 軽貨物の事故が増えており、安全管理者の選任などの制度改正が行われた
  • 国の検討会が受取方法・地域物流・新たな輸送手段の3方向で論点を整理した
このテーマで分かっていないこと 未解決・未確認・研究不足
  • 置き配や宅配ロッカーの普及が、配達1件あたりの所要時間をどれだけ短くしたかは確認できなかった
  • 軽貨物の事故増加の要因を、走行距離・稼働時間・経験年数などに分解した分析は見当たらない
  • 地方の配送で採算が合わなくなる水準を示した公的な基準は確認できなかった
次に調べるべきこと 追加調査の候補
  • 標準宅配便運送約款の改正が実際に行われるかを追う
  • 配送伝票の標準化を議論する官民の枠組みが設けられるかを確認する
  • 貨物軽自動車安全管理者の選任義務の施行後に、事故件数が変化するかを見る

よくある疑問

ラストマイルとはどこからどこまでですか
配送拠点から受取人の手元までの最終区間を指します。距離は短いものの届け先が1軒ずつ異なるため、まとめて運ぶことができず、物流のなかで最も人手のかかる区間とされています。
宅配便はどれくらいの量があるのですか
令和6年度の取扱個数は50億3147万個でした。大手宅配事業者の取扱分だけでも、単純計算で国民1人あたり年間約40個になります。
配達員の負担は増えているのですか
大手宅配事業者では、令和元年度から令和5年度にかけて1人あたりの月間配達個数が約29%増える一方、配達員の人数は約7%減りました。
置き配はなぜ標準になっていないのですか
標準宅配便運送約款が対面での引渡しのみを定めているためです。置き配を行うには個別に国土交通大臣の認可を受ける必要があり、国は約款を改正する方向で検討を進めています。
地方の配送は維持できるのですか
民間試算では2030年に北海道・東北・四国・九州で約40%の輸送力不足が生じるとされています。国は貨客混載の要件緩和やドローンの活用などを検討しています。

出典

本文中の番号は、この一覧の番号に対応します。参照日時点の内容にもとづきます。

  1. ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会 取りまとめ

    官公庁 国土交通省 ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会 2025年11月7日発行 2026年8月8日参照

    小口多頻度化の推移、配達個数と人数の変化、受取方法・約款・地方対策の論点。本文の数値の多くはこの資料による

  2. 「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」の提言を取りまとめました

    官公庁 国土交通省 2025年11月7日発行 2026年8月8日参照

    検討会の設置時期、開催回数、取りまとめの位置づけ

  3. 令和6年度 宅配便・メール便取扱実績について

    官公庁 国土交通省物流・自動車局貨物流通事業課 2025年8月27日発行 2026年8月8日参照

    宅配便取扱個数の実績

  4. 令和7年4月の宅配便の再配達率は約8.4%

    官公庁 国土交通省 2025年6月23日発行 2026年8月8日参照

    再配達率の調査対象が大手6社ベースであること、3社ベースの参考値

  5. 貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正を行いました

    官公庁 国土交通省 2024年10月1日発行 2026年8月8日参照

    事業用軽自動車の事故件数の推移と、安全管理者の選任・記録義務の内容

  6. 貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正について

    官公庁 国土交通省 発行日不明 2026年8月8日参照

    制度改正の施行時期と対象事業者

この研究を引用する

タイトル
ラストマイル配送とは
サイト名
研究図鑑
公開日
2026年8月8日
最終更新日
2026年8月8日
URL
https://research.lb-product.com/research/logistics/last-mile

引用形式の例

研究図鑑 編集部「ラストマイル配送とは」研究図鑑、2026年8月8日公開/2026年8月8日更新、https://research.lb-product.com/research/logistics/last-mile

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