物流拠点はどこに建ち、何が課題か
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物流施設は、主要な高速道路に沿って、そして湾岸部に分かれて立っている。 同じ「倉庫」と呼ばれていても中身は違い、冷蔵倉庫は約34%が築40年を超える一方、 物流不動産は約85%が築10年以内である。国の検討会がまとめた課題から現在地を確かめる。
このページの結論
物流拠点は主要高速道路沿いと湾岸部に分かれて立地している。国の検討会は、全体最適を見据えた配置、中継輸送への対応、老朽化、沿岸部の供給不足、地域との合意形成の5つを課題として挙げた。とくに老朽化は二極化しており、冷蔵倉庫の約34%が築40年超である一方、物流不動産は約85%が築10年以内である。
重要な事実
- 国の検討会が2025年4月9日に報告書を公表し、5つの課題を整理した
- 冷蔵倉庫は全体の約34%が築40年を超えている
- 物流不動産は築10年までの施設が約85%を占める
- 普通倉庫は21,520棟でうち自社保有が約66%、冷蔵倉庫は3,307棟でうち約75%
- 庫内作業の有効求人倍率は梱包作業員2.51倍、ピッキング作業員1.49倍だった
- 新しい大綱は基幹物流拠点の整備を2030年度までに20件と目標に置いた
読むときの注意
- 老朽化の数値は業界団体の調べであり、公的統計ではない
- 有効求人倍率は倉庫業に限らず工場等も含む職種別の数値である
- 検討会の報告書は方向性を示したものであり、制度が確定したものではない
この研究の根拠について
根拠の強さ
強い
情報の新しさ
最新
見解の一致度
概ね一致
出典
5 件(うち一次資料 5)
目次 14 章
このページで使う用語
- 普通倉庫 ふつうそうこ
- 常温で物品を保管する営業倉庫。一類から三類および危険物倉庫(建屋)が含まれる。
- 冷蔵倉庫 れいぞうそうこ
- 一定温度以下で物品を保管する営業倉庫。C3級からF4級まで温度帯で区分される。
- 物流不動産 ぶつりゅうふどうさん
- 不動産事業者が開発し、物流事業者や荷主に賃貸する物流施設。複数企業が入居するマルチテナント型が代表的。
- 中継輸送拠点 ちゅうけいゆそうきょてん
- 長距離輸送の中間でトレーラーの交換や運転者の乗り換えを行う施設。拘束時間の規制に対応するために必要性が高まっている。
- 庫腹 こふく
- 倉庫の収容能力。占有率が高いと新たな荷物を受け入れる余地が少ないことを意味する。
3分で分かる要約#
物流の議論は運ぶ側に集まりやすい。しかし荷物は運ばれる前後に必ずどこかに置かれる。その置き場所をどこに、どう作るかも政策の対象になっている。
国土交通省は2024年10月に「物流拠点の今後のあり方に関する検討会」を設置し、2025年4月9日に報告書を公表した3。この記事はその資料を軸に整理する。
どこに建っているか#
国の資料は、物流拠点の立地について次の傾向を示している2。
| 施設の種類 | 立地の傾向2 |
|---|---|
| 普通倉庫・物流不動産 | 主要高速道路に沿って立地 |
| 冷蔵倉庫 | 湾岸部を中心に立地 |
関東圏では圏央道・外環・国道16号などの沿線、近畿圏では名神高速・阪和道・第二京阪などの沿線に集まり、湾岸部には東扇島や舞洲・夢洲・南港といった地区に冷蔵倉庫が集中している2。
理由は分かりやすい。 常温の貨物はトラックで動くため高速道路へのアクセスが効き、冷蔵・冷凍の貨物は輸出入と結びつくため港湾に近いほうがよい。
検討会が挙げた5つの課題#
報告書は、物流拠点が直面している課題を5つに整理した1。
| 課題 | 内容1 |
|---|---|
| 全体最適を見据えた配置 | 需給が把握されないまま各社の判断で整備されている |
| トラック輸送の変容への対応 | 拘束時間の規制で輸送距離が短くなり、中継輸送拠点が必要になった |
| 老朽化 | 整備資金と建替用地の確保が難しく、支援は倉庫税制にとどまる |
| 沿岸部の供給量不足 | 都市部の沿岸部で庫腹占有率が高止まりしている |
| 地域との合意形成 | 地方公共団体が参画する枠組みがない |
2番目は2024年問題の直接の帰結である。時間外労働に年960時間の上限が入ったことで従前より輸送距離および運転時間が減少し、関東圏と関西圏の中間にトレーラー交換や運転者の乗り換え、休憩の機能をもつ拠点が求められるようになった1。
4番目は食料安全保障とも関わる。都市部の沿岸部で倉庫の庫腹占有率が高止まりしており、輸出入貨物を扱う観点から庫腹量を増やす必要があるとされている1。
老朽化は二極化している#
この記事でいちばん強い数字はここである。
冷蔵倉庫は全体の約34%が築40年を超えている(日本冷蔵倉庫協会調べ・令和5年12月時点・容積ベース)2。一方、物流不動産は築10年までの施設が約85%を占める(不動産協会調べ及び各社公表情報より国土交通省作成)2。
同じ「倉庫」という言葉で語られるが、片方は建て替えが課題、もう片方は新しい供給が続いている。
検討会のヒアリングには、現場の声がそのまま記録されている2。
3つ目が構造を言い当てている。保管料が上がらないため、新しい施設の賃料水準に合わない。 運賃が上がりにくい構造と同じ問題が、保管の側にも現れている。
所有の形も影響する。営業用倉庫の自社保有率は、普通倉庫(総数21,520棟)で約66%、冷蔵倉庫(総数3,307棟)で約75%である2。自社で持っている割合が高いほど、建て替えの資金は自社で用意することになる。
近年は、倉庫業者が物流不動産を賃貸して営業するケースが増えており、建設前から共同で機能を計画するBTS型と、完成後のマルチテナント型を賃貸する形の両方がある2。老朽化した自社倉庫を閉鎖し、土地を提供して不動産事業者が建物を建て、土地・建物を共同所有するという事例も報告されている2。
庫内の人手#
倉庫の中では、トラックの受付、在庫管理、積卸し、フォークリフトによる運搬、梱包、検品、ピッキングといった作業が行われている2。

有効求人倍率は作業分野によって差がある2。
梱包とピッキングは1倍を大きく上回る一方、フォークリフト運転は1倍を下回る。 資格や機械が介在する作業のほうが求人倍率が低いという構図になっている。
倉庫作業員全体の有効求人倍率は、平成28年の0.94倍から平成30年に1.22倍まで上がり、コロナ禍の令和2年に0.74倍まで下がったあと、令和4年は0.88倍と再び上昇傾向にある25。国の資料は「コロナ禍で一時的に人手不足は改善されたものの、再び、有効求人倍率は増加傾向にある」と整理している2。
国は何をしようとしているか#
報告書が示した方向性は3つである1。
報告書が示した3つの方向
- 1国の方針策定拠点に求める役割と、立地・整備に際して配慮すべき事項について一定の方針を示すことを検討
- 2基幹物流拠点への関与地方公共団体も参画するスキームを設け、必要な支援措置を検討
- 3公共性の高い拠点の再構築老朽化した施設の再構築や新規供給を促すため、同様のスキームと支援を検討
共通しているのは、地方公共団体を巻き込む点である。 これまで物流拠点の整備は民間の判断に委ねられてきたが、地域の産業振興、賑わい創出、災害時の防災拠点としての役割を踏まえ、自治体が参画する枠組みが必要という整理になっている1。
あわせて、現状において把握できていない物流拠点を把握する方法や、政府における統計の充実についても検討するとされた1。拠点の需給を把握する仕組み自体がまだない、ということでもある。この論点は物流業界の未解決課題で扱う。
2026年3月31日付けの総合物流施策大綱は、この流れを受けて物流の結節点となる基幹物流拠点の整備件数を2030年度までに20件という指標に置いた4。
不確実性#
老朽化の数値は業界団体の調べである — 冷蔵倉庫の約34%、物流不動産の約85%という数値は、それぞれ日本冷蔵倉庫協会と不動産協会の調べにもとづいて国土交通省が作成した資料による2。公的統計ではない。
普通倉庫の築年数が分からない — 冷蔵倉庫と物流不動産については築年数の分布が示されているが、棟数で最も多い普通倉庫(21,520棟)について同様の分布を示した資料は確認できなかった2。最も規模の大きい区分の老朽化状況が見えていない。
自動化の導入率が分からない — 庫内作業の自動化・機械化が進められていることは資料に書かれているが2、どれだけの施設が導入しているかを示す統計は見当たらなかった。
有効求人倍率は倉庫業に限らない — 職種別の数値(梱包2.51倍など)は、倉庫業に限らず工場等も含むと注記されている2。倉庫業単独の水準ではない。
庫腹占有率の水準が示されていない — 沿岸部で「高止まり」しているとされるが1、具体的に何%なのかを示す数値は確認できなかった。したがって、どれだけ不足しているのかを判断できない。
報告書は決定ではない — 本文で「検討」と書いた項目は、いずれも方向性を示した段階である1。制度として確定したものではない。
研究の穴
分かっていることと、分かっていないことを分けて示します。情報が足りない部分を隠しません。
- 物流拠点が直面する課題が国の検討会で5つに整理されている
- 冷蔵倉庫と物流不動産で築年数の分布が大きく異なる
- 庫内作業の職種別の有効求人倍率が公表されている
- 普通倉庫全体の築年数の分布を示す公表資料は確認できなかった
- 庫内作業の自動化がどれだけ導入されているかを示す統計は見当たらない
- 沿岸部の庫腹占有率の具体的な水準を示す数値は確認できなかった
- 基幹物流拠点の整備件数が年度ごとに公表されるかを追う
- 検討会が挙げた「物流拠点を把握する仕組み」の構築が具体化するかを確認する
- 倉庫業の自動化投資に関する統計が整備されるかを見る
よくある疑問
物流施設はどこに建っているのですか
倉庫の老朽化はどれくらい進んでいますか
なぜ建て替えが進まないのですか
倉庫の人手は足りているのですか
国は何をしようとしているのですか
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出典
本文中の番号は、この一覧の番号に対応します。参照日時点の内容にもとづきます。
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5つの課題と、今後の方向性・支援策の柱
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物流拠点を取り巻く環境の変化や課題(第1回 物流拠点の今後のあり方に関する検討会 資料)
立地の分布、老朽化の状況、自社保有率、庫内作業の有効求人倍率
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「物流拠点の今後のあり方に関する検討会」における報告書を公表
検討会の設置経緯と報告書の位置づけ
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基幹物流拠点の整備件数の目標と、拠点に関する施策の位置づけ
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倉庫作業員の有効求人倍率の出典となる統計
この研究を引用する
- タイトル
- 物流拠点はどこに建ち、何が課題か
- サイト名
- 研究図鑑
- 公開日
- 2026年8月8日
- 最終更新日
- 2026年8月8日
- URL
- https://research.lb-product.com/research/logistics/warehouse
引用形式の例
研究図鑑 編集部「物流拠点はどこに建ち、何が課題か」研究図鑑、2026年8月8日公開/2026年8月8日更新、https://research.lb-product.com/research/logistics/warehouse
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