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自動倉庫の棚から収納容器を取り出す搬送装置

写真: Pexels

ビジネス研究 想定読者: ビジネス 読了 9

物流DXとは

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物流DXは、機械やシステムを導入することだと受け取られやすい。 だが国の政策では、パレットの寸法や伝票の形式といった「そろえる」作業が先に置かれている。 すでに決まったものと、まだ決まっていないものを分けて確かめる。

このページの結論

物流DXとは、機械化・自動化とデータ連携によって物流を効率化する取り組みを指す。ただし国の政策では、その前提として標準化が置かれている。標準仕様パレットは1,100mm角・レンタル方式として2024年6月に取りまとめられた一方、宅配の配送伝票は事業者ごとに異なるままで、共同化の妨げになっていると指摘されている。

重要な事実

  • 総合物流施策大綱は物流DXと物流標準化の推進を柱のひとつに掲げている
  • 標準仕様パレットは平面サイズ1,100mm×1,100mm・レンタル方式として2024年6月に公表された
  • 物流情報標準ガイドラインが物流データの標準形式として策定・公表されている
  • 宅配の配送伝票は事業者ごとに異なり、共同化やデータ活用の支障とされている
  • 予約受付システムは導入するだけでなく効果的な活用まで求められている
  • フィジカルインターネット・ロードマップは2040年を目標に6項目の取組を整理した

読むときの注意

  • 標準化の取組ごとに進捗の段階が大きく異なる
  • 導入による効率改善を定量的に検証した公的な資料は限られる
  • 予算額は物流DX以外の施策と一括で計上されているものがある

この研究の根拠について

根拠の強さ

中程度

情報の新しさ

最新

見解の一致度

概ね一致

出典

5 件(うち一次資料 5)

出典の構成

  • 官公庁 5

これらの指標は根拠がどれだけ揃っているかを示すもので、内容の真偽を判定するものではありません。 判定ルールは編集方針に公開しています。

このページで使う用語

物流標準化 ぶつりゅうひょうじゅんか
パレットの寸法、外装サイズ、伝票、データ形式といった物流の構成要素をそろえること。物流DXの前提とされる。
標準仕様パレット ひょうじゅんしようぱれっと
官民物流標準化懇談会が取りまとめた標準的なパレットの規格と運用。平面サイズは1,100mm×1,100mm。
物流情報標準ガイドライン ぶつりゅうじょうほうひょうじゅんがいどらいん
物流データの標準形式を定めたガイドライン。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期で策定された。
フィジカルインターネット ふぃじかるいんたーねっと
インターネット通信の考え方を物流に適用し、規格と規約を定めて輸送網を共有する構想。2040年を目標としたロードマップがある。
ダブル連結トラック だぶるれんけつとらっく
1台で通常の大型トラック2台分の輸送ができる連結車両。省人化とCO2削減の効果が見込まれている。

3分で分かる要約#

1,100mm角

標準仕様パレットの平面サイズ2

2024年6月に取りまとめ

2040年

フィジカルインターネットの目標年1

ロードマップは2022年3月公表

6項目

業界横断で取り組むべき事項1

ガバナンスからデータ、拠点、輸送機器まで

109億円

物流DX等の推進の予算2

生産性向上・担い手の多様化を含む

物流DXという言葉は、倉庫の自動化やシステム導入を指して使われることが多い。しかし国の政策文書を読むと、順序が違う。

総合物流施策大綱(2021年6月15日閣議決定)は、取り組むべき柱のひとつとして**「物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流の実現)」**を提言している2。そして「物流DXの推進のためには、物流を構成するソフト・ハードの各種要素の標準化が必要不可欠」とされ、そのための官民物流標準化懇談会が設置された2

標準化が先で、デジタル化は後である。 この順序が政策の骨格になっている。

用語の定義 — 3つの層に分ける#

物流DXと呼ばれるものは、性質の違う3つの層が混ざっている。

何をするか
標準化 寸法・形式・手順をそろえる 標準仕様パレット、物流情報標準ガイドライン2
データ連携 そろえた形式で事業者間をつなぐ 共同輸配送、共同保管、検品レス2
機械化・自動化 人手の作業を機械に置き換える 無人フォークリフト、無人搬送機器、自動運航船2

下の層が揃っていないと、上の層は効かない。 パレットの寸法が違えば積み替えが必要になり、伝票の形式が違えばデータを突き合わせられない。機械を入れても、扱う対象がバラバラなら効率は上がらない。

工場内に設置されたコンベアと産業機械の列
機械化は物流DXの一部にすぎない。国の政策では、その前提として寸法や形式をそろえる標準化が置かれている。

何が決まったか#

標準仕様パレット#

官民物流標準化懇談会のパレット標準化推進分科会が、標準的な規格と運用を取りまとめ、2024年6月に公表した2

項目 内容2
平面サイズ 1,100mm × 1,100mm
調達形態 レンタル方式 等

寸法だけでなく、調達の形態まで含めて決めている点が特徴である。 自社で保有すると、届けた先にパレットが滞留して回収が必要になる。レンタル方式は、その回収の問題を事業者間で共有する仕組みにあたる。

効果は荷役時間に直結する。バラ積み・バラ卸しからパレット単位の積み下ろしに変われば、運転者の荷役時間が短くなる。国は標準仕様パレットの導入に係る設備導入・改修、レンタルパレット事業者による共同管理・運用等の取組を支援している2

物流情報標準ガイドライン#

物流データの標準形式を定めたガイドラインが、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「スマート物流サービス」において策定・公表された2。2024年3月には利用手引が公開されている2

このガイドラインに準拠したデータ連携によって、共同輸配送・共同保管・検品レスに取り組む荷主・物流事業者のシステム改修等が支援対象になっている2

フィジカルインターネット・ロードマップ#

2022年3月8日、経済産業省と国土交通省がフィジカルインターネット・ロードマップを公表した1

フィジカルインターネットとは、インターネット通信でデータの塊をパケットとして定義し、やりとりの規約(プロトコル)を定めることで回線を不特定多数で共有する考え方を、物流の世界にも適用しようという構想である1

2040年を目標とした物流のあるべき将来像として、業界横断的に取り組むべき事項が6項目に整理された1

ロードマップの6項目

  1. 1ガバナンス誰がルールを決め、維持するか
  2. 2物流・商流データプラットフォームデータをどこでつなぐか
  3. 3水平連携同業他社との共同化
  4. 4垂直統合荷主から配送までの縦のつながり
  5. 5物流拠点拠点の配置と共有
  6. 6輸送機器車両・コンテナ・パレットの規格

規格をそろえて共有するという発想は、パレットの標準化と同じ構造である。 対象が拠点や輸送機器まで広がっただけと読める。

何が決まっていないか#

宅配の配送伝票#

企業間取引(BtoB)ではパレットや外装サイズ、納品伝票、受け渡しデータの形式の標準化が進められてきた。しかし企業・個人間取引(BtoC)が大宗を占めるラストマイル配送では、宅配事業者ごとに異なる配送伝票や伝票番号の体系が使用されている4

国の検討会は、この状態が次の支障になっていると指摘している4

支障 内容
共同化の妨げ 地域における配送の共同化・分業といった業務の効率化・簡素化ができない
データ活用の妨げ 事業者をまたいだデータの活用が難しい
消費者の手間 宅配サービスを利用する側の手間が増える
担い手の多様化の妨げ 業務が定型化されず、知識・技能の習得コストが増える

検討会は、配送伝票等の記載情報・伝票番号の体系・配送ステータスの把握方法の標準化と、データ形式の標準化に向けた議論を開始するため、官民の関係者が参画した枠組みを新たに設ける方向で検討を進めるとした4

つまり、まだ議論の枠組みをつくる段階である。 BtoBで20年近く進めてきた標準化が、BtoCではこれから始まる。

「入れただけ」は認められない#

トラック予約受付システムについて、国の判断基準は次のように書いている3

トラック予約受付システムについては、単にシステムを導入するだけでなく、現場の実態を踏まえ実際に荷待ち時間の短縮につながるような効果的な活用を行う

導入は要件ではなく手段として扱われている。 荷主への規制で特定事業者に義務づけられた定期報告では、判断基準の遵守状況に加えて荷待ち時間等の状況の報告が求められる3。システムを入れたかどうかではなく、時間が短くなったかどうかが問われる設計である。

データ — 予算の配分#

令和7年度予算における物流関連の配分は、次のように示されている2

物流施策の予算配分(令和7年度予算)
物流DX等による生産性向上・担い手の多様化109億円
物流拠点の機能強化等95億円
物流GXの推進52億円
物流標準化・データ連携の推進4億円

標準化・データ連携は4億円である。 機械の導入支援(物流DX等)の109億円と比べると桁が2つ違う。標準化は補助金で買えるものではなく、合意形成の作業だからと読むこともできるが、政策の重点がどこに置かれているかは数字に表れる。

なお物流DX等の109億円には、自動運航船の普及に向けた制度整備、無人フォークリフト、無人搬送機器、テールゲートリフター、ドローンによる配送の効率化などが含まれる2機械化と自動化が中心である。

車両側の効果#

輸送機器の側では、2種類の革新的車両について効果が試算されている。出典も対象も別なので、混ぜて読まないほうがよい2

車両 想定効果 前提
ダブル連結トラック 年間運転時間 ▲39.5%、年間CO2排出 ▲32.4% 東京・大阪間・ダブル連結14台2
レベル4自動運転トラック 燃料消費量/トン ▲12.3%(関西⇔関東)〜▲14.7%(関西⇔中京) 積載率40%の場合2

いずれも民間事業者が示した想定値であり、実測ではない2。これらの革新的車両は、高速道路のICとの円滑な接続が図られた物流拠点の整備とセットで進められている2。国はレベル4自動運転の実現に向けた実証実験を支援し、社会実装に向けた支援制度の検討を進めるとしている5。自動運転トラックの論点は自動運転トラックは物流危機を解決するかで扱う。

専門家向けの補足#

「物流DX」の範囲が資料によって違う。 予算の項目としての「物流DX等」には機械化・自動化機器の導入が中心に置かれ、標準化・データ連携は別項目として立てられている2。一方、総合物流施策大綱の柱では「物流DXや物流標準化」と並列に書かれる2同じ言葉が、狭義(機械化)と広義(標準化を含む)で使い分けられている。 資料を読むときは、どちらの意味かを確認する必要がある。

進捗を測る指標がない。 標準仕様パレットの導入率、物流情報標準ガイドラインへの準拠率、予約受付システムの導入率のいずれについても、公表された数値は確認できなかった。目標が定量的に置かれていないため、達成・未達を外から判定できない。

BtoBとBtoCで段階が2周ほど違う。 BtoBのパレット標準化が規格の取りまとめまで到達している一方2、BtoCの伝票標準化は議論の枠組みを設ける段階である4同じ「物流DX」として一括りに語ると、この差が見えなくなる。

不確実性#

導入効果の実測値が乏しい — 標準仕様パレットの導入によって荷役時間が何分短くなったか、データ連携によって検品がどれだけ省けたかを測定した公的な資料は確認できなかった。効果は方向性として述べられている。

普及の実績が分からない — 標準仕様パレットが実際にどれだけ使われているか、レンタル方式がどこまで広がったかを示す資料は見当たらなかった。規格が決まったことと普及したことは別である。

予算額の内訳が粗い — 本文で示した予算額は複数の施策を束ねた区分であり2、物流DXそのものに充てられる額を特定できるわけではない。一部はより大きな予算枠の内数として計上されている2

ロードマップの中間評価が確認できない — フィジカルインターネット・ロードマップは2022年3月の公表から4年が経過しているが1、6項目それぞれの進捗を評価した資料は確認できなかった。2040年という目標年に対して現在どの位置にいるのかを外から判断する材料がない。

研究の穴

分かっていることと、分かっていないことを分けて示します。情報が足りない部分を隠しません。

このテーマで分かっていること 確度が高い内容
  • 総合物流施策大綱が物流DXと物流標準化を柱のひとつに掲げている
  • 標準仕様パレットの規格と調達形態が2024年6月に取りまとめられた
  • 宅配の配送伝票が事業者ごとに異なることが国の検討会で課題として示された
このテーマで分かっていないこと 未解決・未確認・研究不足
  • 標準仕様パレットの導入実績や普及率を示す公表資料は確認できなかった
  • 物流情報標準ガイドラインに準拠したデータ連携の件数は見当たらない
  • 自動化・機械化機器の導入によって荷役時間が何分短くなったかの実測値は確認できなかった
次に調べるべきこと 追加調査の候補
  • 配送伝票の標準化を議論する官民の枠組みが設けられるかを追う
  • 次期の総合物流施策大綱で物流DXの目標がどう設定されるかを確認する
  • 判断基準に関する調査・公表で、予約受付システムの導入率が示されるかを見る

よくある疑問

物流DXとは何ですか
機械化・自動化とデータ連携によって物流を効率化する取り組みです。総合物流施策大綱では、物流標準化とセットで「サプライチェーン全体の徹底した最適化」の柱に位置づけられています。
なぜ標準化が先なのですか
寸法や伝票の形式がそろっていないと、荷物を積み替える手間が残り、データも突き合わせられないためです。国は物流を構成するソフト・ハードの各種要素の標準化が不可欠としています。
標準仕様パレットとはどういうものですか
平面サイズ1,100mm×1,100mm、調達形態はレンタル方式などとして、2024年6月に取りまとめられた標準的な規格と運用です。
システムを入れれば判断基準を満たしますか
満たしません。トラック予約受付システムについては、単に導入するだけでなく、現場の実態を踏まえて実際に荷待ち時間の短縮につながる効果的な活用を行うことまで求められています。
フィジカルインターネットとは何ですか
インターネット通信の考え方を物流に適用し、規格と規約をそろえることで不特定多数が輸送網を共有できるようにする構想です。2040年を目標としたロードマップが2022年3月に公表されました。

出典

本文中の番号は、この一覧の番号に対応します。参照日時点の内容にもとづきます。

  1. フィジカルインターネット・ロードマップをとりまとめました!

    官公庁 経済産業省・国土交通省 2022年3月8日発行 2026年8月8日参照

    フィジカルインターネットの定義、2040年という目標年、業界横断の6項目

  2. 物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題(2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会 資料2)

    官公庁 国土交通省 発行日不明 2026年8月8日参照

    総合物流施策大綱の柱、標準仕様パレットの規格、物流情報標準ガイドライン、令和7年度予算の配分、革新的車両の効果

  3. 物流改正法の施行について

    官公庁 国土交通省物流・自動車局 2025年3月10日発行 2026年8月8日参照

    判断基準における予約受付システムの位置づけと、データ標準化に関する記述

  4. ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会 取りまとめ

    官公庁 国土交通省 ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会 2025年11月7日発行 2026年8月8日参照

    宅配の配送伝票が事業者ごとに異なることと、標準化に向けた枠組みの検討

  5. 新たなモーダルシフトに向けた対応方策

    官公庁 国土交通省 官民物流標準化懇談会 モーダルシフト推進・標準化分科会 2024年11月22日発行 2026年8月8日参照

    輸送余力の見える化と、自動運転トラック・ダブル連結トラックの位置づけ

この研究を引用する

タイトル
物流DXとは
サイト名
研究図鑑
公開日
2026年8月8日
最終更新日
2026年8月8日
URL
https://research.lb-product.com/research/logistics/logistics-dx

引用形式の例

研究図鑑 編集部「物流DXとは」研究図鑑、2026年8月8日公開/2026年8月8日更新、https://research.lb-product.com/research/logistics/logistics-dx

更新履歴

内容を変えたときだけ更新日を動かします。表記の修正など内容に影響しない変更は記載しません。

  • 公開

    初回公開

  • 修正

    「燃料消費量/トン ▲12.3%」をダブル連結トラックの効果として記載していたが、出典資料ではレベル4自動運転トラックの想定効果だったため訂正した。車両ごとに表を分けている

誤りや古い情報を見つけたら

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